2008-03-15

鉄と石と

【今日やったこと】

まだ準備は終わらず

◇◇◇


僕は涙を捨てた。
人々は、自分の泣き言は抱えていても、
他人の泣き言は聞きたくないのだ。

人の泣き言など聞いたって
自分の利益になることは少なく
ただただ、同じ話の繰り返しにうんざりし
ちょっと油断すると、自分まで悲しくなってしまうばかり。

時間は有限なのだ。
余った時間は、エクセサイズにでも使って、
せいぜい余計な体脂肪を落とした方が
自分のためだ。



僕は怒りを捨てた
社会に対し、いくら怒りを感じていても
全ては議会で、国民の代表たる代議委員によって
厳然たる審議の結果議決された既決事項ばかり。

今更、言われても。

官僚は申し訳なさそうな顔で、
皮肉にそう言う。


僕は笑顔を捨てた。
この世界は心から笑えるほど
楽しいことはほとんど無い。

多くの笑顔は
周りが笑っているから笑うという
場に従った作り笑い

お笑い芸人のコントに吹き込まれた
合成音声の笑い声の あのもの悲しさ

「笑え!」

コント番組は僕らにそう強制し
僕らは日中の作り笑いで疲れた
口輪筋にむち打って
それを引きつらす

凝り固まった笑顔のまま
僕らは今日を生きている


こうして僕は血のにじむような努力の末、
一つ一つ表情を失い
感情を失って
今ではようやく、
一人の立派な
都会人に
なれそうです。

付記

『同窓』と言う言葉の語源は自分は知らないが、

おそらくは、読んで字のごとく、同じ窓、と言う意味だろう。

外から見れば、
同じ 窓の中に 映っていた人たち

内から見れば、
同じ 外の世界を 見ていた人たち

あの頃僕らの見ていた世界は
結果的にはそれぞれ違っていたのかもしれないが
飛び出していった窓は、誰も一緒だった。

そうなれば、いずれ帰ってくる窓も、また。

何回かの花見と
海水浴と
紅葉狩りと
雪祭りの後で
ある時ふと
思い出すもの

あの窓の景色
あの同じ窓の 窓枠に収まっている
幾人もの笑顔 泣き顔 まじめな顔 怒った顔 優しい顔 澄ました顔

おそらく人生で これほど他人に対し表情豊かな時代が もはや無いのではないかと
思わせるほどの

『同窓』と言う言葉の語源は知らないが、

おそらくは、読んで字のごとく、同じ窓、と言う意味だと。

同窓

【今日やったこと】
明後日の
論文紹介の準備。

◇◇◇

確か、今日か、明日か、それとも来週だったか、先週だったか
そろそろ、僕らの大学の学科の同窓会的な飲み会が日本のどこかで行われているはずだ。

自分は地理的には“海外”にいることもあるし、
飛行機高いし、このとおり、ちょっと予定もあって
参加できなかったが、いまごろ、楽しく旧知の仲を温め直しているのだろう。

自分は、大学時代の飲み会は
通算するとそれほど参加していない方だと思う。

ただ、大学前半の三年間はほとんど0に近く、
残りの一年ほどはほとんど毎日だった。

同級生との愚痴のこぼしあい。
研究室という慣れない環境だったが、あれのおかげで、
何とか乗り切れたのだと思っている。

金のない学生が、
飲み屋で飲み続けるわけにもいかず、
ビール風で最も安かった『ドラフトワン』なる豆飲料を箱買いし、
研究で使う低温室に保管して、毎日ちびちび飲んでいた。

相方は、いつも“柿の種”
これも、安いし、ありふれているから。

柿の種を、二袋ほど開け、
ドラフトワンを2缶開けるか開けないかの内に
飲み会はいつもお開きだった。

夜景のきれいな高層にわざわざ移動し、よりきれいに見るために
部屋を真っ暗にして酒を飲んでいたので、
その階の住人には、大いに不審がられた。

あの頃のドラフトワンは、どうしてあんなに、おいしくて
苦かったのだろう。

口を開けば、ため息ばかりが出た飲み会だったが、
ばかばかしく、青い晩春の一こまには違いない。

今夜は、柿の種と、ドラフトワンでも帰りに買って、
マンションの硝子戸の中から一人、
同窓達の無事と発展を、心から祈っています。