2009-12-19

寒さ・対策

【今日やったこと】
PCR。

テンプレートにする細胞を100個集めるのに、6時間もかかったなんて、
話しをすればみんな笑ってしまう。

笑い事じゃ、無いのに。
◇◇◇


新しいコートを着てきた。
北海道に来てから始めて買った、本格的な防寒着。

去年までは、大学の2年位の時に買った古い、分厚いダウンジャケットを着ていたのだが、さすがに時代遅れの感があり、しかも、襟元がすっかり茶色くなってしまって、見るもみすぼらしい様相を呈していた。

アメリカ屋(この店が、何処まで全国区なのか知らないが)、だったか、
なんかそんな感じのジーンズショップで買ったためか、サイズも異様に大きく、着ていると、何かの映画のマシュマロマンになったような、不格好で、気恥ずかしい気持ちになるのだ。

マシュマロマンは、真っ白だから、まだマスコットにもなれるけれど、茶ばんだマシュマロマンなんて、誰が好んで扮装するだろうか。

そんなわけで、買ったのである。案の定、ユニクロで。


ダウンではなく、えせ物のレザーの、しかも裏地はフェイク・ファーという。嘘つきの固まりのようなコート。

でも、これが、着てみるとかなり暖かい。
今まで、半袖Tの上に、長袖Tを着て、Yシャツを着て、セーターを着て、更にパーカーを重ねて、マフラーを巻いていたのだが、この偽レザーコートだと、セーターが要らない位の効果があった。

ただし、フェイク・ファーという言葉を意識する度に、何故か切ない気持ちになり、
何もない雪だらけの夜をひとりでふらふら歩いてみたい気持ちになってしまうので、放っておくと余計風邪でも引きそうな気がしている。







"くちびるをすりぬける くすぐったいことばの
 たとえすべてがうそであっても それでいいと"


切ねえ。

メカニクス

【今日やったこと】
セルソート。
わけられるもんなら、わけてみろ。

◇◇◇


先週、セルソーターの機能の一部が故障しているのに気がついたので、管理している技官さんに相談したら、近日中に、業者の方が来るので、ちょっと待ってくれと言われた。

話によると、その業者の方というのは、技術屋の方ではなく、営業の方なのだが、機械の構造に詳しく、簡単な修理ならしてしまえるのだという。


そして昨日になって、その件で技官さんから電話があった。
先日話した業者の方が来たから、機械の何処に不都合があるのか、説明していただけないか、と言うことだった。

わざわざ行かなくちゃならないんだ、などと、多少の面倒も感じながら、技官室に赴くと、業者の方が、お二方いらした。女性の方と、男性の方。どちらも見たところ若い方で、暗い色のスーツをきちっと着こなしていた。男性の方は、随分と若く、大卒ちょっと過ぎ位のように見えた。機械も直せる、という言葉から予想していた、ツナギを着たスパナの似合うおじさんではなかったので、だいぶ意外に感じた。

女性の方が前に立ち、男性の方はその後ろに控えるように立っていたので、とっさに、この女性の方が上司なのだな、と思った。

「あ、どうも」
僕がとりあえず頭を下げると、二人とも、軽く頭を下げた。

「……早速ですが、あのソーターをどのように使うご予定ですか?」
真っ先に口を開いたのは、女性の方だった。

「……サカナの細胞を流す予定なのですが」
僕がそのようなことを言うと、女性は、

「あのソーターの原理はご存じですか?用途によっては向かない実験もありまして……。一応点検しましたが、どうやら、チューブが詰まっているようで、ちゃんとした修理が必要かと思います」

僕はきょとんとして、その話を聞いていた。
機械も直せる営業さんというのが、この若い女性なのだと言うことがあまりに意外だったので、話しの初めを殆ど聞き逃してしまっていた。

「……ざっくりとしたお見積もりでしたら、数日中に出来ますので、では、それを見てご検討下さい」
営業の女性は、僕と技官さんを交互に見ながらそう言った。
あんまり真っ直ぐ人の目を見て話すので、ああ、この人はやっぱり理系なのだと納得がいった。理系の人間は、自分の専門分野を話す時には、相手の方を見て、ずんずん話すことが多い。この女性からも、同じものを感じた。

こういう人もいるんだ。
そう思うとなんだか面白かった。


圧倒されっぱなしの説明を終え、その話を研究室の先輩に話したら、

「最近、そう言う女の人って多いですよね」
と言う返事が返ってきた。

言われてみればそうかも知れない。
大学のネットワーク担当にも、確か女の方がいらっしゃったし、メカニックの技術を持つ女の人が、思ったよりもふんだんに、世の中にはもういるらしい。

なんかかっこいいものだ。

でもきっと、世の中には、同じくらい確かな数の、機械を全く扱えない男がいるのだろうと想像すると、思わず変な笑いが浮かんで仕方がなかった。