2008-03-21

山之口貘の詩集を買った。




最近はまっている詩人 山之口 貘 (やまのぐち ばく)の
はまっている詩。
詩集 『思弁の苑』より。

せっかく女をつかんだのに、結局振り回して、くたばらせて、
その上投げつけてしまう。

結局、彼が強く求めていたのは

『僕も女が掴めるという、人並みなこと』

だったのだ。

この詩人は、とても貧乏な詩人で、
晩年、胃ガンで入院した際も、親交のあった他の詩人達がカンパして
ようやく入院させたほど。

でもこの人の、家族に対する、特に
娘のミミコに対する目は、とても暖か。

そして、一方で前期の作品 (結婚前の作品) の多くは
こういう、“人並み”を求める旅路のようで、
なんだか共感できる部分が多い。

しかも、恵まれていないのに、
詩は明るい。悲壮な詩は、ほとんど無い。

畳という詩も秀逸。
畳の上に、女房となる女が現れて、タンスが現れて、ちゃぶ台が現れて...、と、
視点を変えてくれる作品。

それから、『猫』
けっ飛ばされた猫が、飛翔して
神の座にまで至り
そしてしなやかに着地する様子が描かれる。

どれもこれも短くて、詩の総量も少ないけれど
その分、無駄のない、隙のない詩を書く人だと思います。


ちょっとおすすめです。

今宵急がし今急がし

【今日やったこと】

研究室の引っ越し準備。

相当大変。

実験、できねえ。

今夜、焼き鳥。

ジャズ、聞けねえ。
まあいいや。

酒は賑やかが、一番。

静かに飲むのが、二番。

泣いて飲むのは...、相手による。


◇◇◇

○▲□ (まるさんかくしかく)

この話は、もちろん、フィクションです。
登場する団体、人物名、その他諸々、ウソ八百。

おとなのいうことを、こどもは、しんじては、いけない。
しんじれば、うらぎられ、そうしてきっと、おとなになってしまうから。

てな訳で、連載のお試しします。
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見たと言うことを
突き詰めて考えていけば、
やがて、見なかったような気もしてくる。

本当に見たのか
そう問われて、
どこまで己の感覚を
信じることができるだろう

今となっては、その妄想のようにおぼろげな思い出が
真実であったと信じるほか無いのである

いや、妄想なら、妄想でかまわない。
再現性など、この件に関しては、まっぴらごめんだ




当時僕は大学生であり、変化に乏しい毎日に無理矢理刺激を生み出すことに躍起になっていた。大学入学というのは、僕にとっては、いわば大いなる失望の始まりだった。

学園ドラマの大学生の見せる、あのさわやかなきらめきは、どこにあるのか。少なくとも昼時の大学生協の中にひしめく、空腹を抱えた学生達の中に、コロッケ・ハンバーグ弁当を掻き込む、血に飢えた女子学生、男子学生の中に、いくら探しても、その姿はなかった。

期待していたほどの朗らかな人間関係などできず、授業は高校の延長のよう。
挙げ句の果てに、小テストまである。宿題もある。

自分たちの小学校のころは、子供に負担をかける教育は止めましょうと言われていて、宿題なんか、週に何度もでなかったから、大学に来て、こうまで面倒な思いをするとは、正直思わなかった。

面倒な事というのは、続かない物だ。結局、教養の授業なんて、1ヶ月もたたないうちに飽きてしまった。挙げ句の果てに、自分が興味があると思い、選んだはずの専門科目の化学まで、あまたの教養科目と一緒に興味を失ってしまった。

理学部の人間が、理学にすら興味を失ってしまったら、もうすでに、学生としての存在意義は失ったも同然なのだが、やめたとて、なりたいものがあるでもない。せめて大学卒がないと、僕のように骨のない人間には、まともに仕事に着くことすら、難しい。僕はただ黙々と、卒業するためだけに、大学生として与えら得た時間を浪費することに心を砕くことにした。

でも、せめて、身の回りに至極美しい令嬢でもいれば、その子に教えるために、めちゃめちゃに勉強したりもするのだろうけど、幸いかな、この学部は自然科学の看板を掲げていながら、自然の摂理を無視し、男子学生の比率が抜きんでて高い。

遙か遠くに見える、教育学部、文学部の付近には、見目麗しい令嬢が咲き誇れる花のごとくにきらめいているというのに...。この薄暗い鉄筋の校舎では、キノコのような、非常に有益な植物しか繁茂していない。

おそらく、学園ドラマの舞台は、あっちであって、少なくともこっちではないのだ。

それでも、薄暗い林間に咲く一輪のカタクリのような涼やかな花がないではないが...。

池辺のガマのように機能的な顔をした僕には、それを摘むのはあまりにおそれおおすぎ、また、その娘の役に立つためにむちゃくちゃに努力しようとすれば、主席を取るに等しい事を知り、挑む前からあきらめた。

井戸の中のカエルが、高い空を見上げ、ため息をついているように、僕は届かない高嶺の花を今日も視野に入れながら、それにふれることすら、叶わずにいる。

せめて、何か風でも吹くかして、あのきれいな花が、この井戸の底まで、落ちてきてくれないか。その笑顔と、高い香りをそのままに...。

深い井戸を昇る望みも気力もないガマ男には、他力に祈り、すがるのが、関の山だ。



「ねえ、真島君、」
大学一年目にはまだ珍しい、専門科目の講義が始まる数分前に、学部に生えるキノコのひとり...ここでは愛情を込めて、シイタケとしておこう...が片手に数枚の紙切れを持って僕のところにやってきた。

シイタケ嬢はもとより背が小さい。私は座高が高いので、彼女の目の位置は、いすに座った私よりほんの少し上に来るだけだった。

「前に渡した、サークルのポスターなんだけど、もう張った?」