PCR
昨日のは、余計なバンドまでついてきた。
自信喪失と回復と、
先日、川で動物を捕獲する際の、役所への申請について説明会があり、お昼過ぎから札幌駅近くのビルに行ってきた。
川で動物を捕獲する時は、動物の種類によっては、特別許可の申請がいる。
ウナギは、立派な水産資源なので、漁法、漁具、採取区域などを道に申請し、知事の許可を受けなくてはならない。
案の定、全く慣れない世界の話しだったため、なかなかついて行けなかったが、自分の研究に直結する話しだったので何とか寝ないで聞くことが出来た。
さて、その後、説明をして下さった道の関係者の方にお話を聞けた。
実は偶然だったのだが、この方には以前に、ウナギを捕獲する際の許可関係の質問をメールでさせていただいたことがあり、そのお礼をする必要もあって、声を掛けさせていただいたのだ。
向こうも覚えていて下さった。
あらかた挨拶を済ました後、この方なら知っているかと思い、ウナギの幼魚の効率の良い捕獲法について図々しくも質問させていただいた。
「あ、それなら、いい人を紹介しましょう」
その方はすぐにそう返事して下さった。
そして、ちょっと待っててと言って、そそくさと説明会場の片付けを済ませると、
「じゃあ、行きましょう」
と、先に立って歩き始めた。
向かったのは、ビルの4階。
廊下の突き当たりにせかせかと歩いていくと、
「……ここです」
ドアには、とある漁業関係の独立行政法人の文字。
ドアをノックすることもなく、中に入って行かれる。
「こんにちわ」
案内してくださった方は、そこの職員の方と、二言三言話したあと、
「ウナギに詳しい人、いる?」
と、尋ねてくださった。
職員の方が指さしたのは、奥の方に座っておられた若い方。
「……彼が、良く取りに行ってるよ」
すぐに僕に引き合わせてくださった。
「……じゃあ、僕はこれで」
案内してくださった方は、そこで、じゃっと片手を上げると、風のように去って行かれた。
「……じゃあ、ご説明しましょう」
若い職員さんは、早速僕を部屋の少し影になったところにある応接スペースのような所に案内してくださった。マックにある、二人がけの対面のテーブルのような小さな席。彼はそこに、さっきまでちょうど見ていたという、ポストイットがたくさん貼られた資料を広げて見せた。
「……これが、ウナギの漁具です。で、これを使って泥の中を……」
彼は、網のついたカゴのような漁具を指さし、ウナギの捕獲法について説明してくださった。
僕はもう、長いこと、ウナギの幼魚の捕獲を夢見ていた。
海外のグループはみんな幼魚を使っているのに、自分たちはずっと成体しか使えなかった。
だから、実験結果が異なると、一体全体自分が悪いのか、それとも幼魚と成体の違いなのか、はっきりしないことが多く、すっきりしなくて具合が悪いのだ。
僕は半分興奮していて、必死になってメモを取った。
その様子に、説明してくださった若い職員さんは、些かあきれた様子ではあったが、
「……後で、コピーあげますよ」
と言って下さった。
彼は、その上に、夏になったら、おそらくまた調査がはいるから、その時に見にいらっしゃいと言ってくださった。僕は、はい!と思わず二つ返事で答えてしまった。
そんなこんなで、ビルを出た時にはすっかり日が落ちていた。
薄暗い都心を歩きながら、ヨドバシ脇のマックに入り、コーヒーを飲みながら頭を冷やした。
まだ、なんか身体の底がぼおっと熱ったような感じで、忙しさが過ぎ去った後の余熱が抜けきらない感じだった。
でも、それが過ぎ去ってしまうと、物事があまりに上手く進んだうれしさと、ほんの僅かばかり恐ろしさを感じて、嬉しさを戒めるように下唇突き出した早歩きで、冬空の街を歩いた。