セルソート。
わけられるもんなら、わけてみろ。
先週、セルソーターの機能の一部が故障しているのに気がついたので、管理している技官さんに相談したら、近日中に、業者の方が来るので、ちょっと待ってくれと言われた。
話によると、その業者の方というのは、技術屋の方ではなく、営業の方なのだが、機械の構造に詳しく、簡単な修理ならしてしまえるのだという。
そして昨日になって、その件で技官さんから電話があった。
先日話した業者の方が来たから、機械の何処に不都合があるのか、説明していただけないか、と言うことだった。
わざわざ行かなくちゃならないんだ、などと、多少の面倒も感じながら、技官室に赴くと、業者の方が、お二方いらした。女性の方と、男性の方。どちらも見たところ若い方で、暗い色のスーツをきちっと着こなしていた。男性の方は、随分と若く、大卒ちょっと過ぎ位のように見えた。機械も直せる、という言葉から予想していた、ツナギを着たスパナの似合うおじさんではなかったので、だいぶ意外に感じた。
女性の方が前に立ち、男性の方はその後ろに控えるように立っていたので、とっさに、この女性の方が上司なのだな、と思った。
「あ、どうも」
僕がとりあえず頭を下げると、二人とも、軽く頭を下げた。
「……早速ですが、あのソーターをどのように使うご予定ですか?」
真っ先に口を開いたのは、女性の方だった。
「……サカナの細胞を流す予定なのですが」
僕がそのようなことを言うと、女性は、
「あのソーターの原理はご存じですか?用途によっては向かない実験もありまして……。一応点検しましたが、どうやら、チューブが詰まっているようで、ちゃんとした修理が必要かと思います」
僕はきょとんとして、その話を聞いていた。
機械も直せる営業さんというのが、この若い女性なのだと言うことがあまりに意外だったので、話しの初めを殆ど聞き逃してしまっていた。
「……ざっくりとしたお見積もりでしたら、数日中に出来ますので、では、それを見てご検討下さい」
営業の女性は、僕と技官さんを交互に見ながらそう言った。
あんまり真っ直ぐ人の目を見て話すので、ああ、この人はやっぱり理系なのだと納得がいった。理系の人間は、自分の専門分野を話す時には、相手の方を見て、ずんずん話すことが多い。この女性からも、同じものを感じた。
こういう人もいるんだ。
そう思うとなんだか面白かった。
圧倒されっぱなしの説明を終え、その話を研究室の先輩に話したら、
「最近、そう言う女の人って多いですよね」
と言う返事が返ってきた。
言われてみればそうかも知れない。
大学のネットワーク担当にも、確か女の方がいらっしゃったし、メカニックの技術を持つ女の人が、思ったよりもふんだんに、世の中にはもういるらしい。
なんかかっこいいものだ。
でもきっと、世の中には、同じくらい確かな数の、機械を全く扱えない男がいるのだろうと想像すると、思わず変な笑いが浮かんで仕方がなかった。
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