大腸菌にタンパク質を作らせるために、長々と培養中。
適当に増やして、IPTG入れて、あとは4hr以上放置。
その間、やつらは37度のチャンバーの中で、右へ左へゆすられながら、
20分に一回、子孫を増やし続ける。
そのついでに、我が組換えタンパクも、いやいやながら、作ってくださる。
他人の都合で合成させられた、タンパク質と引き換えに死んでいく、無数の名も無き大腸菌たちに、ただ感謝。
で、その間にも、次の実験のプライマー設計。
18時までに発注しないと、明日までに来ないので、
あわてて設計、発注は17時35分。
どれだけゆとりを持って取り掛かっても、なぜか最後にはあわてて、
まるで、タイムアタックのようになってしまう。
一分一秒の世界。
それで、明日実験が進むかどうかが決まる。
まあ、遅れても、一日なんだけど。
せせこましい。今日も大腸菌のリズムで、事は進んでいる。
先ほど、某新聞社から私の携帯へ電話があった。
てっきり、また、料金の未払いとか、契約上のミスとか、
そういうので、文句を言われるのかと思ったら、どうも違うらしい。
電話の主は、本社の方。決して、見慣れた、近所の配達員のおじさんではない。
「おめでとうございます!」
電話の主は言う。
「あなたが、優秀賞に選ばれました!」
私は、悪徳商法の中に、こう言う手法があることを熟知していたので、
とっさに身構えた。そして、
「まあ」
と一言答えた。
どうだ、大げさになりすぎない、抑えたリアクション。さあ、きゃつめ、どう出る?
「あなたが応募された○○について、審査した結果選ばれましたので、朝刊に、所在地と、ご職業と、お名前を掲載する許可をいただきたいのですが。」
ここまで来て、やっと思い出した。
悪徳商法でも、なんでもない、私が招いたことである。
もう、2ヶ月近く前、あまりに実験がうまくいかないので、夜中に、実験の待ち時間のうちに、インターネットで、あちこちのサイトを眺めていた。
そのとき、その某新聞社が、インターネット上で、月に一回、コラムのようなものを募集していることを知り、何とはなしに送ってしまったのだ。
「あなたの文章は、編集委員の○○が誤字脱字などをチェックし、訂正の上、掲載いたします」
なんと、いつも読んでいる新聞の、編集委員さんが、我が、暇つぶしの産物たる、愚にもつかない駄文を読んで、しかも訂正して下さるとは。
思わず、
「おねがいします」
と、柄にも無いことを言ってしまった。
しかし、評価される、ということは、どんなことであれ、うれしいことだ。
たとえそれが、誰もがひれ伏す、権威ある大賞でなくとも、
誰か一人が、自分の文章なり、仕事なりを見て、ほめてくれたのなら、それだけで、
しばらくは、ほくほく顔を維持したまま、生きていけそうな気がする。
本当は、論文でこういう風に評価される日が、早く来てほしいのだけれど...。
まあ、続けていれば、いつかは来るでしょう。たぶん。
今度その投稿した文章をブログに掲載しておいてください。
返信削除もしくは、コピーを我が家まで郵送してください。
考えとく。
返信削除ほんとに悪徳商法かも、しれないし。
もし、ほんとに載ったら...。
新聞ごと、送るよ。