ウェスタン 少し泳動しすぎた。
まあ、大事なし。
疲れた(憑かれた?)のでもう一つ。
深い深い山の奥で 一人の老人が 今まさに息を引き取ろうとしていることに 気づく人はいない
たとえその家族がその周りを取り巻き この 彼らにとって無二の人物の 死を嘆き 悲しんでいたとしても 埼京線を走る 一分刻みの電車が 思わず走るのをためらうことはない
その老人が 思い残した 小さな孫の小さな頭をなでようとして 手を伸ばそうとしている刹那に 丸の内の高層ビルのオフィスの一角で いつの間にか中堅に数えられるようになったOLが 人数分の紅茶を入れながら 周りに聞こえないほど小さな ため息をついていた
老人の言葉は思いの外小さく 長年連れ添った老女は ただでさえ遠くなった耳を口に押しつけんばかりにしてそれを聞き取ろうとしているが 昨日直したばかりのコーヒーメーカーには今日も『使用不可』の張り紙が貼られている
老人は絶命するとき 天井を見上げ なにやら一言つぶやいたようだが それを聞き取れた人はいない ある者は老女の名であったと言い またある者は 孫の名であったと言い 別な者は老女すらも知らない 女性の名であったという
東京のオフィスビルの片隅で すっかり肩身の狭くなった 喫煙者が マルボロの赤い箱を握りつぶしながら大きく一つ くしゃみをしたようだが 老人の遺骨を運ぶ行列の足並みが乱る事は ついぞ無かった
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