昨日の結果はいまいち
忙しくなりそう
ある日世界の片隅で
ニコラという男が 倒れた塔の下敷きになり 息絶えた
その名前は 所持品のパスポートから分かったのだが
彼の妻は 彼の名はポールだと思っていた
その日彼の父はいつも通り街の路地裏に出て
近所の悪戯小僧たちが サッカーボールを追いかけているのを
楽しそうに見つめていたのだが
そのとき彼が思い出していたのは ニコラではなく 幼いとき同じように路地裏を駆け回っていた 兄エンリコのことだった
彼の恋人だった女は
住みならしたアパートの窓辺から
アドリアの海の変わらぬ輝きに一瞬目を奪われていた
かつて将来を誓ったパウロと 良く過ごした白砂の小さなビーチに目を移したとき
家の奥で電話が鳴った
彼の母は そのときすでに亡くなっていたが
生前残した遺書には まだ1歳にも満たなかった末っ子のマルコを心配する
文言が長々とつづられていた
兄のエンリコは仕事場で彼の死を知ったとき
一瞬驚いた顔をしたが 葬儀の日付だけ簡単に聞くと
秘書に 奥に通した顧客に紅茶ではなくコーヒーを出すように指示した
彼は弟が結婚していたことをその時初めて知った
末っ子のマルコは横たわった兄の遺骸を目にしたとき
この人のことは何も知らないことに気づいた
いつも兄弟3人でいながら
この兄の 夢も希望も興味も何一つ自分は知らなかったと気づいた
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