大腸菌とランデブー。
うらら、宇宙の、風に……。
今日はちょっと愚痴。
去年卒業していって、近くの別な研究室にポスドクとして移った先輩が、急にこっちの研究室を訪れた。
その先輩より更に年上の大先輩に相談しに来たのだったが、なんだか、実験で困っているようだったので、自分も話を聞こうと思って、質問したら、はぐらかされてしまった。
この人がそう言うことをするのはいつものことなので、気にせず、なおも聴いてみると、相談しに来たはずなのにのらりくらりと僕の言葉を交わし、一向に要領を得ない。
(どうやら、からかわれているようだ。)
そう思った頃、ふと見ると、先日のあの後輩が、なんだかおかしそうに笑っている。
先輩は、その笑い声に元気づけられるように、ハイテンションになり、僕と、相談相手だった大先輩をからかうように笑って、結局、何を相談したかったのか、はっきりわからないうちに、じゃあ、いいです、と言っておかしそうに去ってしまった。
彼が去ってから、僕がその大先輩に、あの人、何が聴きたかったんですかね、と話していると、自分の話になど、全く絡んでこなかった例の後輩が、さも楽しそうに、笑って、その事情を詳細に語り始めた。
彼女と、彼が付き合っているということは、みんながうすうす感じてはいた。
それはそれで、結構なことなのだけれど、周りをからかった挙げ句に、二人して、笑っているその様子には正直自分は不快を通り越して、残念だった。
後輩はまだ、二十代も前半だから、そういうふうに周りが見えなくなることはしょうがないことなのかも知れない。
だが……、あの先輩の方は、もういい年のはずなのだ。
いずれにしろ、もう二人とも、子供じゃないわけだし、二人で他人を不快にしてまで盛り上がる様な行為を平然と出来てしまうのは、どうなのだろう。
人の悪口を言って、そうしてくすくすと笑い合って、仲を深めるような関係を、自分は余り好ましいとは思わない。そうして周りから、どんどん人が消えていって、気がつけば二人だけになって、それが二人を、どんどん近づけては行くのだろうけれど……。
なんだか、それは悲しいことのような気がする。
少なくとも自分は(もちろん、からかわれたのだから)不快だったし、失望した。
その先輩を好きになれないまでも尊敬をしていた部分はあったし、後輩のいいところをもっと見つけようとしていた矢先だった。
後輩はその後吹っ切れたように、かつて先輩の口から聞いた言葉と全く同じ言葉を、言葉の端々に織り交ぜながら、話すようになった。もちろん、僕に背を向けて。
お互いの距離を測りながら、少しづつ近づいたり離れたりする恋が、彼らには出来なかったのだろうか。自分を見失う程、心酔できることは幸せだとは思うが、ブレーキの外れてしまった車輪は、一体何処に転がっていくのだろう?
あんな見境のない恋をする位なら、1人でふらふらしていた方がまだましだと、恋など忘れておいてきた眼鏡の男は、腹立ち紛れに大腸菌をつつきながら強く、思った。
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