大腸菌、久しぶり。
PCR久しぶり。
すっかり忘れてる。
夜。実験が長引きそうだったので、コンビニへ出かけ、ガラナという炭酸飲料を買った。
雪国のあつすぎる暖房がのどを渇かしてしまうので、それを潤すためにそもそも
飲み物を買おうと思ったためなのだが、結果的に買ったのは、普段でも飲まない甘い炭酸飲料だった。
甘さ控えめの時代にあって、その炭酸飲料は、昔からある古い物で、
故に、昔気質の強い甘さを今に残していた。
口に含むとその炭酸は強力で、暖かな舌の上で、人工的な香料の甘酸っぱい香りを
目一杯に振りまいてくれるのだが、飲めば飲むほど、のどが渇いた。
その甘さにくどいとも思ったが、それを捨てることはできなかった。
シャープな切れ味のコーヒーより、跡を残さない緑茶より、
口を潤すだけのミネラルウォーターなどよりも、
くどいほどの甘さを口の中にいつまでも残ししつこくしつこくひけらかし続けるこの炭酸飲料の方が素朴で、優しいのはなぜなのだろう
食べきれないほど皿によそうことを、何よりのもてなしと考える田舎の人々のような
人を一人にしてくれない優しさに反発し、今頃になって恋しがっている身勝手な自分に気づいた、今日という日に。
暖かい部屋に置かれた炭酸飲料はふたを開けるたびに、
ぷしゅうと小さく音を立てる。
誰もいない実験室の片隅にあってそれは小さなため息にも聞こえた。
心からひとと馴れ合うこともできず、いつまでも一人に慣れないままに
自分の心は未だに何の結論も出せずにいる。
自分にとっての幸せを求めるための物のはずだったこの旅が
その目的の達成という点においては手がかりすら得る事ができずにいる。
友人の多くが脱したモラトリアムに未だしっかりととらわれた曖昧模糊とした精神を破れた内蔵のように引きずり、
見えない物を追いかけて、見えてしまう物を遠ざけながら、
都合のいいピースばかりを貼り合わせ、空想のジグソーパズルは完成する。
『心象のはひいろはがね (灰色鋼) から
あけびのつるはくもにからまり
のばらのやぶや腐植の湿地
いちめんのいちめんの諂曲模様
(正午の管楽よりもしげく
琥珀のかけらがそそぐとき)
いかりのにがさまた青さ
四月の気層のひかりの底を
唾し はぎしりゆききする
おれはひとりの修羅なのだ』
--宮沢賢治 「春と修羅」より抜粋
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