二次抗体
もうなんども してきたこと。
解き放たれた真空が、周りの空気を吸い込むように
人生におけるあまたの喪失が感受性の源だと気づいた
失ったことで生まれる虚無
それを補おうとする外気の流れ
うしなうたびにうしなうたびに
宮沢賢治は輝きを増し 中原中也は重くのしかかり
太宰治はいとおしくなり 安部公房は塔のように聳える
見えなかった言葉が、色が見えるようになり
感じられなかった音楽が感じられるようになって
見えていると勘違いしていた自分の
聞こえていると思っていた自分の 幸せな慢心が
恥ずかしくてしょうがない
このまま 長い人生
幾多の喪失の果てに、やがて全ての物を失ったとき
すべてがすべて すっからかんになってしまったとき
世界はどれほど輝くだろう
ただ一つ分かることは
そのとき、たとえ自分は孤独であったとしても
世界を憎むことはもはや
できなくなっているだろうと言うことだ
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