2007-07-17

漢方薬とT細胞

【今日やったこと】
遺伝子Aのゲノムを読もうと目論む。ライブラリーのスクリーニングの準備。仕事は少ない割りにやたら時間がかかった気がする。

あとは、新潟でひどい地震があったので、友人の安否を確認していた。
とりあえずみんな怪我はなさそう。まず、なにより。
◇◇◇


体にばい菌やウイルスのような“異物”が入った時、免疫という、体の軍事部門みたいな機構が働いて、そのばい菌を体から除こうとする。免疫には、軍事部門らしく、命令好きの上官“ヘルパーT細胞”と、それに従う大勢の部下たちがいる。

免疫系のお得意の戦術には大きく分けて二種類ある。
一つは、“狙撃部隊”B細胞が作り出す、“抗体”という飛び道具を用いて、体に入ったばい菌を除く戦術。
もう一つは、“殺し屋”キラーT細胞を使って、ウイルスに取り付かれた仲間の細胞を、取り付いたウイルスもろとも殺してしまう戦術だ (織田信長もびっくりの非道)。

実は、指揮官であるヘルパーT細胞には2種類あり、それぞれ、前者の戦略を好むものと、後者の戦術を好むものがいるとされてきた。

ふつうは、これら両方がうまくバランスを取り、異物を除去しているのだが、人によっては片方の戦術に大きく偏ってしまうことがある。前者に偏れば、アレルギー、後者に偏れば、ある種の自己免疫疾患にかかりやすくなる。現代の日本人の多くは、前者に著しく偏っているという。そのため、何らかのアレルギーを持つ人が増えていると考えられているそうだ。

今朝の授業で、アメリカかぶれの先生から、それをぐだぐだと聞いていて、ふいに、東洋医学に出てくる、“陰陽説”を思い出した。

中国や韓国の本格的なお店で漢方薬を処方してもらう時には、いろいろな方法を用いて、その人の体質がいま、陰の状態にあるか、陽の状態にあるかを、まず判断するのだという。薬は、あくまでそのバランスをを補正するために処方する。漢方だけでなく、鍼灸の“つぼ”もそう。“気功”もそう。みんなその考えに基づいている。

そうやって処方された漢方が、実際どれだけ南蛮渡来の免疫学に適合するのかは、わたしの浅い知識では解らないが、たとえ偶然であっても、“体のバランス”というものを補正するという考えにいたった中国4000年の歴史には感服する。人間の体の特性のようなものを、長い歴史の中で、ある程度見抜いていたのかもしれない。それだけ、昔から人間は病気と戦ってきた、ということでもあるのかもしれない。

ただし、最近になって、先にあげた“指揮官”ヘルパーT細胞には、さらにもう一種類あることがわかっており、免疫系の命令系統は、どうやら“三つ巴”になっているらしい。さらに、それらをなだめる、“じいや”のようなT細胞もあるという。

さすがに、ここまでは伝統も無理か、と思いきや、韓国には、5色のバランスをとった食事をすれば病気にならないという考えがあると聞く。

これで、5種類までO.K... とするのはこじつけか。