2007-12-02

その色はブルーブラック

【今日やったこと】
モノクロのクローンが、もうずいぶん育ってきて、

抗体も順調に作ってくれているようなので、

勢い余って抗体染色。

病理学の研究室なので、

技官さんに組織片を渡せば、

あっという間にパラフィン包埋して、切片化までしてくれる。

こっちはそれを脱パラして、染めるのみ。

プロってすげえ。

◇◇◇


万年筆を買った。

先日、日用品を買いにロフトに行ったら、

そこの文房具売り場の片隅に万年筆コーナーがあって、ちゃんと専属の店員さんまでつけてあった。

ショーウィンドーの中の万年筆はどれも、新品でありながらアンティークのような気品を備えていて、地味な黒っぽいペン軸とは対照的に、ペン先だけが、金色に輝いていた。

自分は、文房具がどうやら好きなようで、文房具屋に行って、使いもしない物を買い、後で後悔することが、やたら多い。

そんなわけだから、この万年筆というやつも、いつかはいい物が一つ欲しいと夢見ているが、その気品に見合う、高貴なお値段を伴っていることが普通で、とても一介の貧しき学生には手が出ない。

何より、この現代、ワードプロセッサなる物の進出により、ボールペンですら、もう存在価値を失いつつある中で、より歴史ある、すなわち旧式の万年筆なぞ、象徴的価値以外の何物も持たないような気がしている。

でも、これだけデジタルな世の中でも、さらに、クオーツ式、電波式の方が、圧倒的に正確だとしても、ゼンマイ仕掛けのクロノグラフがもてはやされるように、こういう小物の象徴的価値は馬鹿にできない物がある。実際、自分も、グルメだとか、服だとかいう物にはいっこうに興味はないくせに (頭の先から足の先までユニクロづくしなのは、私か、ユニクロの店員さん位のものだろう。おそらく店員さんも、普段は別なメーカーの服を着ているのだろうが) 、こういう古めいた小物にはなぜか弱い。

手に入れたとしても、自分に似合うかどうかは、また別の問題だが、それでも、いつか、何らかのこだわりの一品を手に入れたいと思うのは、このような品に関してのみだ。

そんなわけで、万年筆も、使う、使わないは別として、いつか手に入れたいと思ってはいるのだが、前述のように値段の点で全く手が出せないでいた。

しかし、万年筆は、単なるお高くとまった文房具ではなく、今も生きているのだ。

その、ロフトの片隅の万年筆コーナーのさらに片隅に、壁掛けからぶら下がるようにして、おもしろい形のペンが並んでいた。見ると、それらはすべて万年筆。しかし、クリアブルーやクリアグリーンや、レッドと言ったカラフルな色遣いで、一見すると万年筆に見えない。

しかも値段は1500円程度。ショーケースの万年筆の1/10だ。

私は、そのデザインがおもしろかったのと、万年筆を使ってみたかったこともあり、どうせ安物、と覚悟しながら、そのうちの一本を購入した。

家に帰り、早速それでノートの切れ端に落書きしてみると、思いの外書きやすい。

自分はペンの持ち方が悪いため、ちょっと物を書いただけで、指先がすぐ痛くなって疲れてしまうのだが、このペンは力を入れる必要が無く、いくら書いても手が疲れなかった。

安物にしては、やりおる。

あとで、ネットでそのメーカーを調べてみて、合点がいった。

その万年筆は、ドイツあたりの、万年筆のちゃんとしたメーカーの一つ“ペリカン”社製で、学校教育向けに、子供を対象として作られている“ペリカーノ ジュニア”という物だった。

子供向けでありながら、その作りはしっかりしていると評判で、実際、楽天あたりで書き込みを少し見てみると、大人の使用者もかなり多い様子。これなら使っても、余り恥ずかしくない。

しかも、ご親切に、正しいペンの持ち方を補正できるように、つかむところのラバーに指を置く位置の印までついている。まさに、私向きだ。

万年筆のよく使われるインクは、“ブルーブラック”とか言うそうで、ボールペンの黒を想像していた私にとっては、あまりに青色でびっくりしたが、どうせ、いつもと違う気分で物を書きたいときに使うんだろうし、それでもいいかな、とは思っている。

いつか、ショーケースに収まった、きらきらした万年筆を買える日まで、この、安い、でも手堅い品は、自分の慰めになってくれそうな気がする。

実際高いやつ買っても、もったいなくて、こっち使うかも、しれないけど。