2010-08-25

帰ってきましたよ、学会終わって。

神戸での学会発表が終わり、早々に帰ってきた。

そもそも学会は今週一週間続くので、まだ始まったばかりなのだが、自分の発表は初日だったものだから、少なくともすでにノルマはこなしたのだ。

自分のテーマを一緒にやっている後輩が特にいるわけではないので、学会で自分が出払ってしまうと、その間、自分の研究は完全にストップしてしまう。ただでさえ学会に行くと、刺激が強くて、様々なことを試してみたくなるというのに、一週間もいたら、欲求不満がたたって、いずれは会場で吐血して果ててしまうんじゃないだろうかと思う。

いっそ、会場に実験機材をみんな持って行きたい気分だ。
会場に来ていたスターバックスの緑のキュートな移動販売車(ワゴン)のように、実験室も移動できたら、どんなにかいいだろう。


そんなわけで、今日は早々に引き上げてきた。

神戸は暑くて、外でじっとしているだけで汗がにじんでくるほどだったから、自分はもうどこかへ観光へ出る気も起きず、今日は尊敬する大先生の講演を聞いた後、昨日出会った海外の共同研究者と午前中ずっと話をして、実は同じホテルに止まっていたことに、今朝になって気づいた前の大学の後輩とお昼を食べ、あとはそのまま空港に向かった。

空港についたのは14:00時だったのだが、実は飛行機そのものは19:30発なので、まだ相当時間があった。それでも自分は、とにかく帰ったらすぐにでもしたい実験だけが頭を巡っていたので、とっとと手荷物を預けて、待合室に入った。

待合室は無人と言っていいほどで、奥の一角に、沖縄行きの飛行機を待つ一群が、いかにもバカンスといったくだけた格好で、ヘラヘラしながらたむろしていた以外は、静かなものだった。札幌行きの飛行機は、沖縄行きの次になっていたから、自分は場違いなものを大いに感じながら、沖縄行きのグループから少しずれる形で、ひっそりと椅子に座っていた。

時間が余ってしょうがなかったので、常々読もうと思って読めなかった文庫を2冊読んだ。

ひとつは「告白」。
マアマア面白かったが、話は相当テレビでもやっていたので、ストーリーの意外性は残念ながら全くと言って感じなかった。物語が、主要人物の独白のスタイルで綴られていくのは独特で、サスペンスとしては斬新だったが、一人称というスタイルの弱点で、情報量が少なく、話がどうしても「後出しジャンケン」になってしまう。

つまり、伏線が少なく、展開をドラマチックにするために、あとから、前段階からは予想できない、リアリティーの少ない、奇想天外な展開を持ってくるしか無くなってしまう。

この物語の結末も、教師森口が、ある意味超人的な観察眼と、判断力、洞察力、そしてなにより、想像を絶するほどの陰湿さを持っていなければ至れないと思われるもので、それは物語の中で語られる、彼女のリアリティーからは、想像できないものだ。

これで、この森口が、最初からジェームズ・ボンドとか、シャーロック・ホームズ張りの経歴の不明さと聡明さを持っていればまだ救われたのだが、苦難に満ちた人生が詳らかに語られてしまっているので、それも期待できない。

結論としては、このスタイルで、いいサスペンスを書くには、もうちょっと工夫がいるかも知れないとうことだ。一人称は、携帯小説やライトノベルで最近は多用されており、そういった方面からの読者にとってはとっかかりやすいかもしれないが、読書が好きになってきて、ほんとうによく出来たサスペンスに出会ったら、その完成度の高さに、感動を通り越して、ぞっとするはずだ。


というわけで、新鮮さは感じたが、二作目、同じスタイルで書いたら、あまり期待できない気がする。この作家の今後に期待。もう欠かないだろうな、このスタイルでは。書き続けたら、多分飽きられてしまうだろう。


一方で、もうひとつはエッセーの「おぱらばん」。堀江敏幸という作家が書いた話で、これは特に良かった。自分はこの人の文体は、とにかく好きだ。なにも起きなくても、この文体の海に沈んでいるだけで、幸福を感じられるほど。ただ文字の列を目で追っているだけで、ゆったりとしたそれでいて稠密な音が、頭の中に響いてくるようだ。

12のエピソードから構成され、その多くはフランス留学時代のもの。日常からの、出来事の切り取り方も素敵だし、その文章を彩る、当時読んだであろうフランス文学からの印象的な引用が、絵画を彩る額縁のように、物語に奥行を与える。日常なのに、平板的にならないのは、彼の引用があまりに適切なためだろう。フランスという国、特にパリという街が、実は今も小説の中にあるのではないかと錯覚させられてしまうそんな素敵な小品群。


そんなこんなを読み終わって、大学もどってきて、実験を再開。

大腸菌を起こします。

フランスのエスプリよ、また今度。

2010-08-21

海外に出るためのいろいろな手段

「もし海外に出るのならあと一年」

という先生の言葉を受けて、自分なりにその手段を少しづつ調べている。

とは言っても、その際に一番大切なのは自分自身の実績だそうなので、論文をさらに積み上げるのが近道に違いないんだそうだが。

先生にまず紹介されたのは「アレクサンダー・フォン・フンボルト財団
http://tokyo.daad.de/japanese/jp_scholarship_avh.htm

駆け出し研究者 (ドクター取得後4年未満) から、立派に中堅クラス (4年から12年) まで、幅広く支援している。

自分が使うとしたら、"駆け出し"向けの二年コースになる。
月 2250ユーロ = 24.5 万円 位だそうだ。
十分なようにも思えるが、物価が高いヨーロッパであることを考えると、決して高い方ではないのかもしれない。

ただ、この基金のすごいのは、その他の支援が充実している点。

1. まず、受け入れ先の研究機関に、研究費として、月8万円が支給される。

2. さらに、本格的な研究に入る前に、研究者と、その配偶者のために、数カ月間の“徹底的な”語学教育期間が設けられる。

3. 研究者は、第三者からの支給が無い場合には、一括になるが、旅費の支援が受けられる。

4. 三ヶ月以上家族が滞在する場合には、家族に対する支援が出る (配偶者一人当たり月3万円、子ども一人当たり月2万円)


すごい。これなら生活できる。

先生によると、こういう制度を作ることで、海外から人材をドイツに呼び寄せ、架け橋になってもらおうという狙いがどうもあるらしい。


日本の研究者支援で、ここまでしっかりしたものは、おそらく無いんじゃないだろうか。

ていうか、こういう制度にしてもらわないと、研究者は人生捨てて研究するしか、なくなるよね。


おそらく日本だけからじゃなく、他の国からも応募はあるだろうから、先生曰く、結構難しいかもしれないということだ(彼は留学時、獲得しておられたそうだが)。

もっと簡単なのもあるそうなので、そちらの情報も集めてみようと思っている。


まずは、実績を積む。
そして、
受け入れ先に、アピールできるだけの仕事をする。

かなあ。

2010-08-08

English 再び!

8月22-24の間、神戸で開催される国際免疫学会に参加する。

国際学会ではあるのだが、日本でやるので、なんだかありがたみも薄れるが、それでも外国人は一杯来るだろうし、公用語は英語だろうし、プレゼンを準備する分には変わらない。

前回の初海外出張を、なんとかかんとか乗り切ったことに調子にのってしまい、今回もオーラルで演題を出してしまった。

みんなそうするのだろうと思っていたら、あとで、いつもオーラルの先生まで、今回はポスター発表にしたと聞いた。


……不甲斐ない!


前回、国際学会に出て、つくづく思ったのだが、日本人ほど、自分が英語をできないのを気にする民族もいないんじゃないだろうか?

正直、ああいうところではいろんな英語が飛び交っていて、発音はほとんど母国語、みたいなエキゾチックな英語が至る所でかわされている。

それでも言葉は通じるのだし、会話はなんとか成立するのだし、それで、いいのではないかという気がしている。


そもそも、自分の国の言葉ではないのだから、うまくしゃべれなくって当然だ。
それでも英語で伝えるしか無いのなら、逆に伝わりさえすれば、それで十分なのだ。

綺麗な英語より、伝わる英語。

そう思わなくっちゃ、Far East の孤島の住人としてはやってられない。