2008-03-14

回帰不能点 (The point of no return)

【今日やったこと】

二次抗体。
繰り返す繰り返す

◇◇◇


先月から、ずっと同じ作業を繰り返していることから
気づいた人は気づいたかもしれないが
実験が具体的に
前に進んでいない。

もとより、時間のかかることは承知の上だったが
先生の設定したリミットをそろそろオーバーする頃になり
今後どうするかをきめるため、少しばかりディスカッションをしてきた。

先生は私の結果さえ出れば、すぐにでも、論文を出したいという。
しかし、肝心の結果が出るめどがない。

3つの大きなハードルのうち、一つはあっさり超えることができ
この調子ならと意気込んでいた矢先の足踏み。

すぐにでも論文を出したいと、数ヶ月前からおっしゃっていた先生は
数ヶ月たっても結果のでない自分にうーんと唸って考えておられたが、
「でも、やっぱり、君の結果があるとないとでは全く違うから」
とおっしゃって、論文を後2ヶ月待ってくださるとおっしゃった。

実は自分としては、なかなか結果が出ずにいるのに最近相当悩んでおり、
(暗い詩が多かったことからも分かるように)、実家に帰っても相当悩み、
ともすれば、『研究など、やめようか...』などという言葉がのど元に突っかかってくるのを、何とか何とか押しこらえていた。そう言うとき、親というのはすごいもので、母親は別として、普段マイペースな父親は、息子のそう言う弱気な様子に気づいたらしい。ジーンズの前ポケットから、おもむろにドリンク剤を取り出して (明らかに不自然だ) 私に勧めたり、買ってくれたこともない缶コーヒーを買ってくれたりしていた。
ただし、父は私に元気がないのは、どうやら学生身分では叶わぬ恋をしているからだと勘違いしたらしく、「いい人がいたら、時期は考えるな」と、的外れなことを言っていた。私は、父の勘違いにはあきれたが、それでも、親らしく、子供の弱気を見抜いた点には感謝した。

そんな、すれ違い親子の感動秘話の後で、私はようやく勇気がでて、先生に
最近実験がうまくいっていないことを打ち明けたのだった。

二ヶ月待ってくれるというのは、実は自分はそれほど期待してはいなかった。
先生はずっと早く論文を出したがっておられたし、
自分に期待できないなら、待ってもしょうがないと判断するのが常識だ。

競争の激しい業界で、なかなか手間取る自分を気長に待ってくださる決心をした
先生には本当に感謝している。

とにかく、結果を出さねばね。
何より自分のために、そして、期待してくれる人のために。

まあ、当分は暗い詩ないし文章が続くと思いますが
あまり気にせずいてください。

頭の中の不安をはき出しているだけですので。

再生

【今日やったこと】

泳動は続く
思索も

◇◇◇


あの日東京が滅んだ後も
人々はいつもの自然災害の時のように
復興に向けて歩き出したのだが

いざ復興してみると
できあがったのは
依然と変わらぬ社会だった

一度滅んだからと言って
子供達の給食からピーマンが除かれることはなかったし
宿題が少し減ることもなかった

お母さん達はやっぱり
お父さんの給料のことでぶつぶつ言っていたし
お父さん達はやっぱり
かみさんのことで頭を悩ませていた

おじいさんおばあさんが突然奮起し
往年の若き青春の日々を再び取り戻そうと老骨にむち打ち朗らかに日比谷公園を闊歩する
事はなかったし

NEET達が
日本経済の今後の展望について
各紙論説委員の主張の相違点を総括し2チャンネル上で白熱の議論をすることもなかった

引きこもりは相変わらずアウトドアとは無縁だったし
詩人達はやっぱり世間とは縁がない

全てはあまりに当然で
以前の不自然が懐かしくなるほどに
退屈な日々が帰ってきたのだ

若者達はスリルを求め
脱法すれすれの行為を
夜ごと繰り返してはいたが
それすら一つの壊滅を挟んで
ずっと続いていたことだ

当たり前だった生活を
当たり前でない出来事の後で
当たり前のようにしてみせる

人は東京が滅んだとき
それが己が権利であるかのように
あるいは新たな闘争であるかのように
拳振り上げ戦ったのだが
結局至るところは
街のはずれのひなびたお化け屋敷で
ありふれた恐怖をむさぼる日々

非日常という物を栄養素のように
必要としていながら
日常という足場から
軸足を移すのをためらっている

それを平和というのなら
欲求不満の固まりだ

人間という動物に組み込まれた
戦闘モードの神経回路は
今日もバッティングセンターで
バットを正しく握るために
ノルアドレナリンをテノヒラに
とりあえず分泌している

孤独に関する考察

【今日やったこと】
泳動。

ながれろながれろ。


◇◇◇


『おれのことなど、誰も考えちゃくれない』
『誰一人、おれを支えてくれる人はいなかった』

ひとり者の最後のあがきを
『そんなはずはないでしょう』
と言う具体的な言葉によって否定されたときの
取り残された寂しさ

船から放り投げたロープが
陸まで届かず 着水したときのような
あの小さな水の音にも似た

それを孤独と呼ぶのだ

そして孤独な人間は
己の失敗も苦労も何もかもを
全て恵まれない自分自身の境遇のせいにしてやっと
二本の足で歩いているので

突然突きつけられた具体の刃によって無惨にも
打ち砕かれてしまう

周りに支えてくれる人間のいること
予想以上に世界は好意的であること
その事実を受け入れられずに
新たな孤独の種を見つけそれにしがみつく

あるいは
己のよりどころを失って
真昼の影のように
太陽を憎みながら小さくしぼんで消えてしまう

いずれにしろ孤独な人間の求める物は
彼の孤独を認めてくれる人間なのだ

孤独を認める隣人によって
孤独な人間が再生するという矛盾に満ちた状況

陰を日向にするような そんな状態のない限り
孤独は孤独のまま
世界の隅で
湿り続ける

飼い犬の午後

【今日やったこと】
もう寝ようかな
明日の予習

◇◇◇

飼い犬の優しさの
半分でも僕が持っていたら
きっと僕はだまされるだろう

なついた人こそ真実と全てを投げ出す
その従順さに純朴さに
人間は舌なめずりをするから

飼い犬の優しさの
半分でも君が持っていたら
きっと僕は幸せだろう

もはや何も考えなくてもエサさえあげて
時々体をさすってあげれば
君は笑ってくれるのだから
時には散歩もするだろうし
病気の時には病院にも連れて行ってあげるのだろうが
たったそれだけのことで
君はなついてくれるのだから
真っ黒に濡れた黒目がちの瞳で
口元をゆるませ 穏やかに
僕を見つめて くれるのだから

わかりきったことしか 考えていないという
その最大の功績に
人間は密かに感謝しながら
何も考えていないようで
実はいろいろ考えている
人間の難しさに 心の中で ためいきついているのです