2007-11-22

残像

【今日やったこと】
今後の実験で使う試薬を考える。

一長一短。

結局決めかねて、後で先生と相談することにした。

明日は大事な実験。

休みなのに?

休みだから。

◇◇◇


似ていた。

髪型、背格好、着ている服の色合い。

全体のバランス。

表情。

首に巻いた、マフラーの色まで。

一瞬、目の片隅でその姿をとらえたとき、
本人かと思った。

まさか。


確認するために、視野の中心で、それをとらえ、
まじまじと見たはずなのだが、その顔の印象はよく覚えていない。

ただ、似ているという、おぼろげな感覚と、相手も、こちらをずっと、
表情も変えずに見ていた、と言う事実だけが記憶に残っている。

今思うと、相手は、かすかに微笑んでいたような気がする。
顔は覚えていないのに、軟らかい表情を、自分は感じている。

その時間は、5分間だったのだろうか。10分間だったのだろうか。
あるいは、ほんの数秒の出来事に、過ぎなかったのかもしれない。

自分は、軽く会釈くらいは、した気がする。
目があったのは、事実だから。

でも、声はかけずに、すれ違った。

何事もなく。


声など、かけれるものか。あくまで、偶然すれ違った人に過ぎないわけだし、
根拠のない親近感を抱いてしまったのは、あくまで、自分の方だけだったのだから。


床に引いたアルコールが、静かに乾いていくように、
一瞬わき上がった空白の感情が、きれいに揮発していくのを感じながら、
液体窒素を汲みに行った。