先日作ったもの。
なんだかぼんやり疲れていて、
そのまま気持ちを言葉にしたら、
こんなになっちゃった。
---
物価というものが、おしなべて需要と供給によって定まるとするならば
僕の値段は、いかほどだろう
八百屋の店先に並んだ僕を
ある日一人の女性が見つけた
「いくら?」
「250円です」
「ふうん」
「高いわね。目が、死んでる」
女性が求めていたのは、
一本の若いアスパラガス
まだあおい土の香りを、全身にまとわせたまま。
死んだ目をした一個の僕は、そのまま八百屋の店先に、根が生えたように寝そべって
いつまでも並んでいたが、あるときふと、店主が尋ねた。
「おい、これ、何日目だ」
「3日目です」
「全然動いてねえな。捨てちまうか。」
こうして僕は、店の裏方に、生ゴミのバケツに詰められてうち捨てられた。
そんな僕を、路頭の犬でさえ嫌い
野良猫ですら、避けて通った。
カラスなどはグルメなものだから、僕にこびりついた、古いマヨネーズばかりを食べてしまって、僕自身は食べようとはしなかった。
僕はこうして、明日の清掃車を待つ。
最後の日も、特にいつもと変わりはなく
星は夜に瞬き、太陽は西に沈んだ。
まるで、明日が続くと、言わんばかりに。
2008-03-26
Jazz黄門、厭世の道
【今日やったこと】
PCR, 泳動、細胞培養、SDS-PAGE、
研究室の模様替え。
新入生多数。
相当賑やかになりそう。
きゃっきゃしてる。
前からいた男も、新しく来た女も。
若けえ。
枯れすすき
青葉の色を忘れたり
駄作。
◇◇◇
何日か前に、マイルス・デイヴィスのCDを買って、テイク違いだったけど、それを聞いている、
と言うことを書いた。
でも結局、ある時、衝動的に欲しくなってしまい、
ついにまた同じものを買ってしまった。
やっぱり、あれは特別なのです。
自分にとっては、なぜか。
最初にしびれた、ジャズだからかな。
ロックも好きだけど、どうしても、歌詞が付くと、
『きみを、愛してた。
どこ行ってしまったんだ。
君無しでは、生きていけない
僕が馬鹿だった
許しておくれ』
的なものが多くなり、悪くないけど、なんだかナヨナヨしている気がして、
「いつまでも、グダグダしてんじゃねえよ!」
と突っ込みを入れたくなるし、その元気もないようなときには、余計にふさいでしまって、
あまり気持ちが前に進まない。
そんなときは、そんな男のボーカルのキンキンナヨナヨした曲は聴きたくないし、女の人の声は、なおさら聞きたくなかったりする。
そう言うとき、やっぱり、ジャズが恋しくなるのですわ。
最近は、特に。
ムード・ジャズみたいに(あのハスキーな管楽器のやつ)、ピンクの妄想が自然と広がってくるものは、落ち着かないけど、マイルスの時代のものは、響きが冷静で、アップダウンも少ないし、気持ちを静めてくれる気がする。
嘆いても、叫んでも、笑っても、どこか、冷静な自分が、それを見ている。
そう言う、落ち着いた涼しい空気が、スピーカーから流れてくる気がする。
竹林の影の、小さな庵。
そういうところに佇むような、静かな気持ちになる。
まあ、やっぱり曲によるんだけどね。
人より二回りぐらい、老け込むのが早いな、おれ。
そのうち、誰より早く、隠居して、出家でも、するのかも。
同世代の諸君、後は、頼んだ。時代は、君たちのものだ。
PCR, 泳動、細胞培養、SDS-PAGE、
研究室の模様替え。
新入生多数。
相当賑やかになりそう。
きゃっきゃしてる。
前からいた男も、新しく来た女も。
若けえ。
枯れすすき
青葉の色を忘れたり
駄作。
何日か前に、マイルス・デイヴィスのCDを買って、テイク違いだったけど、それを聞いている、
と言うことを書いた。
でも結局、ある時、衝動的に欲しくなってしまい、
ついにまた同じものを買ってしまった。
やっぱり、あれは特別なのです。
自分にとっては、なぜか。
最初にしびれた、ジャズだからかな。
ロックも好きだけど、どうしても、歌詞が付くと、
『きみを、愛してた。
どこ行ってしまったんだ。
君無しでは、生きていけない
僕が馬鹿だった
許しておくれ』
的なものが多くなり、悪くないけど、なんだかナヨナヨしている気がして、
「いつまでも、グダグダしてんじゃねえよ!」
と突っ込みを入れたくなるし、その元気もないようなときには、余計にふさいでしまって、
あまり気持ちが前に進まない。
そんなときは、そんな男のボーカルのキンキンナヨナヨした曲は聴きたくないし、女の人の声は、なおさら聞きたくなかったりする。
そう言うとき、やっぱり、ジャズが恋しくなるのですわ。
最近は、特に。
ムード・ジャズみたいに(あのハスキーな管楽器のやつ)、ピンクの妄想が自然と広がってくるものは、落ち着かないけど、マイルスの時代のものは、響きが冷静で、アップダウンも少ないし、気持ちを静めてくれる気がする。
嘆いても、叫んでも、笑っても、どこか、冷静な自分が、それを見ている。
そう言う、落ち着いた涼しい空気が、スピーカーから流れてくる気がする。
竹林の影の、小さな庵。
そういうところに佇むような、静かな気持ちになる。
まあ、やっぱり曲によるんだけどね。
人より二回りぐらい、老け込むのが早いな、おれ。
そのうち、誰より早く、隠居して、出家でも、するのかも。
同世代の諸君、後は、頼んだ。時代は、君たちのものだ。
○▲□ (まるさんかくしかく) - 6
毎年現れるという点で、すでに何らかの人為的な物を感じざるを得ない。
どこの宇宙人が、地球の都合で勝手に作られたカレンダーに従って、
ミステリーサークルを作るんだ?
僕は、この話には乗れなかった。
さすがのシイタケもそれには同感だという。
「だって、高速に乗って、時間かけて、わざわざ、農家のおじさん達が作った、ミステリーサークル見に行くわけでしょう?」
シイタケは言った。
「何で農家のおじさんなんだよ」
僕は尋ねた。
「聞いたよ。何せ、去年のミステリーサークルをカピパラ部長が見に行ったとき、間違って前日に着いちゃって、手伝わされたって言ってたもん。」
...僕はカピパラ元部長が、農家の人と麦畑の中、ミステリーサークル造りにいそしんでいる姿を想像した。
熱い夏の太陽が、カピパラと、農家のおじさん達の額を、容赦なく照りつける。
たちまち滴る玉のような汗。
テカる頬、前頭、頭頂、あるいは後頭。
しかし、その表情は、みんな、なぜか眩しいほどの笑顔だ。
「おやつにすべえー!」
農家のかみさんの、救いの声が、聞こえる。
「だからあの村では、今年もうちの学生が手伝いに来るのを、楽しみにしてるんだってさ。」
労働力として。シイタケの言葉に、僕は夢もそがれる思いだった。何で、こんなサークルに入ってまで村おこしの手伝いをしなくてはいけないのか。そう言うことは別に、そう言うことを望む、ボランティア精神に富んだ人たちの集団がこの大学にもたくさんあるはずだ。
「いや、たいていのそう言うサークルは、みんな正義感が強いから。そういう、うさんくさいことは、詐欺まがいだとか言って、非協力的らしいよ。」
「詐欺だろう。どう見ても」
UFOが作ったと言ってウソをついて、人を集めるのだから、詐欺と言われてもしょうがない。
コウベ牛だと言って、輸入牛肉の焼き肉を食べさせたり、コーチンだと言って、普通のニワトリの肉を食わせるのと、たいした違いは無いじゃないか。
「でもねえ、気持ちは分かるのよ」
シイタケが感慨深げに言う。
「あの村、特に名産品があるわけじゃなし、せいぜい麦と豆ぐらいしか育たなくって、観光の目玉になるような物は何もないの。それに、ミステリーサークルそのものが十分うさんくさいから、みんな見に来る人たちは、半分承知で来ているんだと思うけど。騙されたくって来てるんだから、騙すのもサービスでしょ。どっかの夢の国と大差ないじゃない」
夢を売る商売と、ウソを白々しく平気で売るのとはちょっと違う気がしたが、どこが違うのかと言われれば説明できない。相手がウソと知っていていれば、それは許されるのだ。マジシャンは種も仕掛けもないことはしないし、魔法だって使えない。夢の国で夢の生き物たちの背中が割れて、おばさん達が顔を出したら、むしろ怒られるだろう。たとえ、そちらのほうが真実だとしても。
「だからねえ、そう無下にもできないわけよ」
「じゃあおまえは、行きたいのかよ」
僕はそれでも行きたいとは思わなかった。何でこの暑い中、わざわざ汗かくようなことをしなくてはいけないんだ。
「それとこれとは話が別」
シイタケは意外とクールだ。
「手伝いたいのは山々だけど、それはそもそも私たちのグループの趣旨とは違うし、なにより」
シイタケは窓の外の強い日差しを見つめた。
「白肌には毒だわ」
僕はあえてここで、シイタケの容姿について、とやかく言うつもりはないが、僕が彼女を、頭の中でシイタケと呼んでいるのには、それなりの理由があると言うことだけ、言っておこう。彼女はあくまでシイタケであって、まかり間違っても、ブナピーではないのである。
「まあ、そう言うことだから、カピパラ部長の顔をつぶすようだけど、今回は無しにしましょう。いいじゃない、あの顔、これ以上つぶれようがないわ」
そう言うとシイタケは、はははと笑った。
そんなシイタケはさておき、僕は先ほどから何も言わず、うつむいたままのカタクリが気になり出した。大きな瞳が足もとの一点をとらえたまま動かない。何かを、思い詰めている様子でもある。こんな連中とはいえ、初めて参加したのだから、言いたいことを言えずにいるんだろうか。
「樋口さん、」
僕はカタクリに声をかけた。
どこの宇宙人が、地球の都合で勝手に作られたカレンダーに従って、
ミステリーサークルを作るんだ?
僕は、この話には乗れなかった。
さすがのシイタケもそれには同感だという。
「だって、高速に乗って、時間かけて、わざわざ、農家のおじさん達が作った、ミステリーサークル見に行くわけでしょう?」
シイタケは言った。
「何で農家のおじさんなんだよ」
僕は尋ねた。
「聞いたよ。何せ、去年のミステリーサークルをカピパラ部長が見に行ったとき、間違って前日に着いちゃって、手伝わされたって言ってたもん。」
...僕はカピパラ元部長が、農家の人と麦畑の中、ミステリーサークル造りにいそしんでいる姿を想像した。
熱い夏の太陽が、カピパラと、農家のおじさん達の額を、容赦なく照りつける。
たちまち滴る玉のような汗。
テカる頬、前頭、頭頂、あるいは後頭。
しかし、その表情は、みんな、なぜか眩しいほどの笑顔だ。
「おやつにすべえー!」
農家のかみさんの、救いの声が、聞こえる。
「だからあの村では、今年もうちの学生が手伝いに来るのを、楽しみにしてるんだってさ。」
労働力として。シイタケの言葉に、僕は夢もそがれる思いだった。何で、こんなサークルに入ってまで村おこしの手伝いをしなくてはいけないのか。そう言うことは別に、そう言うことを望む、ボランティア精神に富んだ人たちの集団がこの大学にもたくさんあるはずだ。
「いや、たいていのそう言うサークルは、みんな正義感が強いから。そういう、うさんくさいことは、詐欺まがいだとか言って、非協力的らしいよ。」
「詐欺だろう。どう見ても」
UFOが作ったと言ってウソをついて、人を集めるのだから、詐欺と言われてもしょうがない。
コウベ牛だと言って、輸入牛肉の焼き肉を食べさせたり、コーチンだと言って、普通のニワトリの肉を食わせるのと、たいした違いは無いじゃないか。
「でもねえ、気持ちは分かるのよ」
シイタケが感慨深げに言う。
「あの村、特に名産品があるわけじゃなし、せいぜい麦と豆ぐらいしか育たなくって、観光の目玉になるような物は何もないの。それに、ミステリーサークルそのものが十分うさんくさいから、みんな見に来る人たちは、半分承知で来ているんだと思うけど。騙されたくって来てるんだから、騙すのもサービスでしょ。どっかの夢の国と大差ないじゃない」
夢を売る商売と、ウソを白々しく平気で売るのとはちょっと違う気がしたが、どこが違うのかと言われれば説明できない。相手がウソと知っていていれば、それは許されるのだ。マジシャンは種も仕掛けもないことはしないし、魔法だって使えない。夢の国で夢の生き物たちの背中が割れて、おばさん達が顔を出したら、むしろ怒られるだろう。たとえ、そちらのほうが真実だとしても。
「だからねえ、そう無下にもできないわけよ」
「じゃあおまえは、行きたいのかよ」
僕はそれでも行きたいとは思わなかった。何でこの暑い中、わざわざ汗かくようなことをしなくてはいけないんだ。
「それとこれとは話が別」
シイタケは意外とクールだ。
「手伝いたいのは山々だけど、それはそもそも私たちのグループの趣旨とは違うし、なにより」
シイタケは窓の外の強い日差しを見つめた。
「白肌には毒だわ」
僕はあえてここで、シイタケの容姿について、とやかく言うつもりはないが、僕が彼女を、頭の中でシイタケと呼んでいるのには、それなりの理由があると言うことだけ、言っておこう。彼女はあくまでシイタケであって、まかり間違っても、ブナピーではないのである。
「まあ、そう言うことだから、カピパラ部長の顔をつぶすようだけど、今回は無しにしましょう。いいじゃない、あの顔、これ以上つぶれようがないわ」
そう言うとシイタケは、はははと笑った。
そんなシイタケはさておき、僕は先ほどから何も言わず、うつむいたままのカタクリが気になり出した。大きな瞳が足もとの一点をとらえたまま動かない。何かを、思い詰めている様子でもある。こんな連中とはいえ、初めて参加したのだから、言いたいことを言えずにいるんだろうか。
「樋口さん、」
僕はカタクリに声をかけた。
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