大腸菌は、僕を裏切りました。
彼らは、自分たちは裏切ったつもりはないと、言います。
君が勝手に期待して、勝手にその過ちに気づいただけだろう、と。
僕は言いました。
じゃあ、どうして、先に言ってくれなかったんだ。
言う機会は、いくらでも、あったじゃないか。
彼らは言いました。
僕らと、君とは、そう言うことを話す関係じゃないと、思っていたから。
僕は、言葉を失いました。
心の中には、実際、言いたいことがたくさんあって、太陽の表面のように、
時々プロミネンスを吹くのですが、それは言葉でありながら、僕の声音をわずかに震わせるだけで、実際の言葉になることは、無かったのです。
実際彼らは正しいと思います。
だからこそ余計に、僕の渦巻く怒りは、目標を見失っていました。
僕は、無言のまま、次亜塩素酸の瓶を取りました。
やめろ、やめろ、と彼らは言いました。
僕はその瓶のふたを開け、数千倍に希釈した液体を、ビーカーに張りました。
そして、
さよなら
と言って、彼らをその中に沈めたのです。
僕のことなど、忘れてしまえばいい。
君は君の幸せに生きたんだろう?
僕は心の中で彼らにそう語りかけていました。
彼らは初めのうちは、その水の中でもぶくぶくと泡をはいていましたが、
やがてひっそりと静かになりました。
次の日、来たときにはもう、彼らはすっかり変色していました。
次亜塩素酸の中で、プラスチックディッシュだけが、クリスタルのように
朝の光の中で輝いていました。
これ、片付けますか?と技官さんが言うので、
はい、お任せします。
と僕は答えました。
人間の体内時計は25時間周期だという。
そのせいか、近頃、生活のリズムが壊れてかなわない。
どうも、原因は24時間しかない一日の内に、
それ以上の仕事やら、趣味やらを持ち込んでいるためらしいのだけれど。
考えずに一日のしたいことをしていると、あっという間に、24時間を飛び越えて、
本来の25時間の一日を生きてしまっていることに気づく。
どちらが、自然な生活なのか、自分には分からない。
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