2008-04-27

A Box man

【今日やったこと】
これから実験してやる。

引きこもり上がりの少年のように、
生きることに対して、
無駄に気合いの入っている今日。


◇◇◇



安部公房の、『箱男』を読んだ。

相変わらず、すごい。


『見ること=見られること』を追求した作品。

相手を見ると言うことは、同時に相手に見られることだが、
もし相手が、見られることを放棄し、
見ることに専念し始めたら。

相手に、見られることを強要することになる。

主人公は、頭から段ボールをすっぽりかぶった箱男として、
その小さな除き窓を通して、相手を観察し始める。

主人公は同時に小説を書いている、『記録者』(僕)でもあるのだが、
ときに、記録者が、記録者でなくなり、箱男が偽箱男になり、
では本当の箱男とは誰だったのかという謎かけがでて、
仕舞には思わず混乱に巻き込まれている自分がいる。

正直、一回では、30%も理解した気にはなれない。

現在の、ネットのように『匿名性』が、恐ろしいほどの圧力で
のさばっている時代において、
何十年も昔の、この人の作品が、
当に時を得ているような気がしてならない。

見るだけで、見られないことをいいことに、
言いたい放題言う人も中にはいるしね(自分を含め)。


また、この小説は、実験的な小説とも言われる。

小説の主人公は大抵、
目の前で起きる事件を淡々と記録する、第三者という位置づけにある。
(日本の、わたくし小説的になると別だが、
グレートギャッツビーとか、日はまた昇るとかは当にこれ)

しかし、これは、相手に覗かれずに、覗くと言う行為をしているわけで、
相手には、見られると言うことを強要している。

箱男はそう言う意味で、
常に小説を書いている本人(僕)ではあるのだが、
それが箱をかぶった男として文中に登場し、
時に箱からでたり、書いているノートが偽箱男に奪われたりする物だから、
次第にもともとの記録者が観察される方に回り
また元に戻ってしまったりする。

さっきまでの箱男が、箱を出たとたん、劇中人物になってしまうところが
この小説のおもしろいところだ。

大いに混乱したけれど、
その表現のすごさに圧倒された。

20世紀最大の作家の一人、と言われるのは確かにそうかもしれない。
大江健三郎は、カフカに並べてほめているそうな。

そう言えば、大江健三郎は、まだ読んだことがないなあ。
『飼育』と言うのが有名だと聞いているから、
そのうち読みます。

次におそらく読むのは
『食堂かたつむり』
すごく優しそうな小説で、
本屋の入り口にディスプレイされていたので、
ほとんど、タイトルだけで衝動買いしてしまいました。

楽しみ。
ちょっと立ち読みした感じだと、
料理好きの人はいいかも。

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