2009-03-22

breath in blue

落としたのなら、正直に、そう言うといい

だれも、君を責めたりはしないから


君はもう、それを失ってしまったのだろう
遠い渚の、アスファルトの防波堤の、いつだったか腰掛けて、
ぬるいコーラを飲み干したあの場所に

戯れる蟹もいないあの砂浜には、砂の城すら築かれなくて
高台の灯台守は、ふもとで遊ぶ子供らに、怒鳴りつけることさえもなく

だた丘を昇り、船を見て、いい気持ちで深呼吸している彼らに
優しく笑ってみようかと、鏡を見ながら、微笑む練習をはじめて

いい加減、上手に笑えるようになった時には
彼らの姿はもうなくて
灯台守は仕方なく、沈み始めた太陽に、こっそりと笑顔を向けてみたりする


中身のすっかり干上がったコーラの空き缶が
ザリガニのすみかとなるまでに
今朝来た子供らはいつしか、安定と節約という魔法の呪文で
この世界は出来ていることを知り
大人になると言うことが
どんなものでも数えられるようになることと、ほとんど同義なのだと悟って

無限に広かった海はその時、小さな一リットルのバケツの中に収まってしまい
悠久に拡がった丘の上の空はもう、僕らの空ではなくなってしまうその瞬間を乗り越え

いつだったか、思い出が、夢と同じに、頭の中にしか存在しないことに気づいて
ただ泣き叫ぶ石の上で

残酷なのは破れた夢ではなく破れずにいる思い出

消せない過去ではなく、描けない未来

現在という点から、一歩も外に踏み出せない僕らは
未だ広い海の前で途方に暮れながら
いつしか日は沈み

笑顔の練習をしていた灯台守すらも眠ってしまって
ただ、空き缶を握りしめながら

海ばかりを見ていたことに気がつく

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