2008-03-22

○▲□ (まるさんかくしかく) - 2

はい、続き。
主人公の名前はOさわ氏のあどう゛ぁいすにより、“真島”に決定(ちょーてきとー)
ヒロイン (?) シイタケの名前は勝手にこちらで決めました。

Oさわ氏に限らず、今後も改善点、コメント、是非ご忠告ください。

筆者
--

「前に渡した、サークルのポスターなんだけど、もう張った?」

シイタケ嬢が持ってきた紙切れというのは、数日前に入ったサークルの、メンバーを募集するポスターだった。

超常現象を科学で解明するという極めてうさんくさいサークルで、案の定、現存メンバーは少なかった。数年前、こういうのが流行ったときに、部長が勢いに任せて創ってしまったそうで、それからまもなくブームも去り、新入部員もほとんど現れないまま、ついに部長は卒業してしまったのだそうだ。

「僕は修士課程に残ったから、一応メンバー募集しているんだけど、」
初めて顔を出したとき、部長は言った。前歯を忘れたカピパラのような顔だった。
「実質活動している人間は、いないから、君らで勝手にやってちょうだい」
カピパラ氏はそう無責任に言い放ち、初対面の僕らにいきなり全権を明け渡すと、ぼく実験が待ってるからと言い残して、さっさと奥の部屋に入ってしまった。

後に残された僕たちは、唖然として、どうしようかと考えていたが、いずれも大学に入ったばかりで身寄りがなかったし、一応は興味があるので選んだサークルではあったので、このまま放り出すのもいやだった。

理系の人間には、一見すると不真面目のように見える人であっても、何か始めるとなると、とりあえず区切りのいいところまで物事を進めてみないことには気が済まないという、損な性格の保有者が多い。何かを中途半端に放っておくと、なんだか口の裏に、乾いた麩菓子が張り付いたような気持ち悪さを感じて、その感覚に負けて、結局キリのいいところまで、その路線を進行してしまうのだ。

僕も、シイタケもどちらかと言えばそう言う部類の人間だった。それで、せっかく入ったのだからと、そのサークルに留まってしまった。


さすがに、我々二人だけではどうにもならないと感じたので、相対的に絵のうまいシイタケがポスターを作り、数十枚印刷し、それを半分にして、手分けしてあちこちの掲示板に張ることにしていた。

僕はすでに、彼女から受け取ったポスターは手当たり次第目につくところに貼っていた。

『部員求む!』

ポスターにはそう大きく書かれ、ナスカの地上絵を書きたかったのだろう、あの有名なハチドリの図を想わせる一筆書きが、どう見ても、どこぞの手みやげの“ひよこまんじゅう”にしか見えない躍動的な筆致で、伸び伸びと、描かれていた。

これで人が集まるのだろうか?

「ああ、張ったよ。野中さんは?」
「あたしもほとんど張ったんだけど...、あたしの張ろうとしたところ、ほとんどあなたが張ってたから、結局何枚か余っちゃたんだよね」
彼女は手に持った数枚のポスターを申し訳なさそうにひらひらと降った。
安紙がペりペりと音を立てた。
「じゃあ、あらかた張ったんなら、後は教室の後ろにでも張っといたら?」

教室の後ろには、授業の掲示用のスペースが作られてあり、そこにはすでに先客のポスターが所狭しと貼られていて、肝心の授業の掲示を捜すのが困難なほどであった。

「はは。あれじゃあ、掲示物の意味がないけど...まあいいか、余りだしね」
そう言うと、小柄なシイタケ嬢はとっとこ、とっとこと春先のウリ坊のように跳ねていき、自分の手の届く一番上のところに、余ったポスターを続けざまに掲示して、そうしてまた同じ調子で僕のところに戻ってきた。

「できるだけ、目立つところに張ったけど」
彼女は言った。
「あんまり、下だったわね」



案の定、それから数日たっても、新入部員は現れなかった。
僕たちは、ポスターを作る段階からすでに、そう言うことになるだろうとは予想していたが、
実際にこうまで来ないと、さすがに落ち込んでしまう。

おれの、大学生活は
シイタケと一緒なのか。

そう言う思いは、考えてみれば彼女も一緒だろう。

あたしの、もう二度と無い早乙女の季節は
こんなガマ男と一緒なのね。

体長の20%超を占める、彼女の顔に、そう大きく書いてあった。

そんな、お互い不本意なサークルであるなら、とっとと止めれば良かったのだろうが、もうポスターまで貼ってしまった手前、どうすることもできなかった。

カピパラ部長の勝手な目算でポスターには“部長 野中”、“副部長 真島”として、でかでかと連絡先が載せられてしまっていたのだから。
「今思うと」
うんざりした顔のシイタケが言った
「載せるんじゃなかったわ。あんなカピパラの意見を聞いた、あたしが馬鹿だった」

彼女にまでカピパラと認識されていた元部長は、あれ以来、僕たちの前に姿を現すことはなかった。しかし、現部長のシイタケには時々連絡を入れているらしい。

シイタケはシイタケで、初めは他に頼る者がいなかったので、その忠告を、はいはい、と大人しく受け入れていたのだが、この元部長が、余り頻繁に細細と電話を入れて来るものだから、最後には、
「あのカピパラ...。...もしかして、あたしに惚れたのかしら」
などと、根も葉もないうぬぼれに陥るまでになった。

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