2008-03-25

○▲□ (まるさんかくしかく) - 5



カタクリ嬢の加入により、僕のサークルへの本気度は俄然高まったのは言うまでもない。

それはそうだ。シイタケなどと顔をつき合わせているより、カタクリにもしや、見られているかもしれないと意識するだけで、無様なまねはできなくなる。

友人達を見る限り、これは、自分だけでもないと思うのだが、男というものは、たった一人女の子がその場にいるのといないのとでは、その快活度がまるっきり違ってしまうものだ。

昔、ある薬品関係の会社のCMで、だらしない格好のだめ男達のところに、かわいい新人のマネージャーが現れたとたん、彼らはファッションを改め、突然さわやかなおじさま達に変身してしまうと言うのがあった。

そのCMは『触媒』についてのCMで、かわいい女の子を、だめ男達を紳士に変える触媒にたとえたというわけだ。あそこまで極端でなくとも、だいたい似たようなものだ。強い野球部にはかわいらしいマネージャーがつきものだし、得意教科の先生は、きれいな女の人だったりする。

僕は実際、高校の3年の頃、苦手だった国語の先生が、学校で一番きれいな女の先生になり、それで前年度3割り増しに成績が上がった経験がある。もちろん、それは僕に限ったことではなく、クラスの男子、ほぼ全員がそうであったのだが (一部嗜好の異なる者を除いて) 。

他の授業は寝ているくせに、国語になると一睡もしないばかりか、積極的に手まで挙げる男どもを見て、クラスの女子達は、さぞあきれたことだろう。しかし、その女子とて、英語の時間に教育実習の若い大学生が来たときには、目の色変えて話しかけていたものだ。

いずれにしろ、僕にとって、カタクリは十分『触媒』たり得る人だ。この力を得て、やる気無く、活力もなく、ぐうたらと時間をつぶす、しょうもない僕とは、今日限りおさらばしたいと思った。


カタクリの加入する少し前くらいから、僕らの間ではある一つの計画が持ち上がっていた。それは、大学のある街から、80kmほど北に行った所にある、とある農村に、“毎年現れる”というミステリーサークルを、探索しよう、という話だ。

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