2009-08-23

この手には何も掴めないのか?

この手には何も掴めないのか?
欲しいと思った全ての物はこの手から滑り落ちていく。
紫色の桐の花は、もはや無いのと差して変わらず、海の色したその石さえも、ただただ空を掴むばかり。
この白い、誰の役にも立たない掌は、それが何にも使えなかったことの証し。
傷だらけの指と腕を持つ友人のその太い指先を見ながら、己の指をただふり返る。

掴むことは傷つくことと、教えてくれたのは誰だったか?
傷一つ無く今日まで過ごしたこの指先に、愛や勇気や、真理を語る口はあるのか?
無言で立ちすくむ力ない指は、今日も同じ顔をして青白く五本並んだまま、つかみ所のない青い空を見上げ

理想を追う物の指はいつも、傷を知らず、痛みを知らない。
それは掴めぬものを追い求め、掴めるものをしっかりと掴んでこなかったから。
零れていく物を追わず、ただ、前だけを見つめ続ける者に、こぼれ落ちた物をふり返るだけの
握力も気力も残されてはいない。

前を見るしかなかったのだ。後ろを見ることは、なお、怖いから。
しゃがみ込み、過去をふり返ろうとすれば、膝は萎え、もう踏み出せなくなるかも知れなかった。

ただ、それは...。

建設的といえるだけの、前向きな行為なのか?
手を汚さず、建設したそれは、果たしてこの地に受け入れられるのだろうか?

幾つもの臆病を抱え、今日も手は、その役目をもてあましている。

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