2008-04-20

月夜

何事も前に進んでいないのに

なんだか少し前を向いて

歩いていけそうな気がした


ハンバーガーショップの店員さんの顔を、じっと

見つめる勇気が湧いたのは、

ずいぶん久しぶりだと思う。


Keyboard売り場で
鮮やかな手つきで鍵盤を打ち鳴らす、
紳士的な風貌の若い背広のお兄さんを
何度となく見つめながら

人前でも、自分を見せられる
その自信と
その音色の持つ無機質な哀愁に
思わず吸い込まれた自分

蛍光灯の、あきれかえるほどの渦の中で
自分の星を見失い星を探して歩いた

気がつけば大きな満月が
趣向を凝らした近代的なビルの向こう側に
白熱灯のような光り方をして

合理性を追求した末に
ある一定の目的を設定されたが故に
それらが必然的に沈殿して
築き上げられたこの巨大なartifactと

ただ、そこにある、月との秘密めいた会話に
思わず耳をそばだてた
月ほども空を飛べない一個の塊

いつもより世界がはっきり見えるこの感覚を
もう二度と失わないように

塊は夜空
恋人とじゃれ合いながら
ひそひそ話を続ける月に祈った

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