2008-04-17

髭面の赤児

欲しいものが、手に入らないとき

初めはみんな、だだをこねて、お母さんを困らすところから始まる。

次に、それは、人から、力づくで奪うことに繋がって、

それもダメだと言われると、

自分で何とか手に入れようと、努力するようになる。

でもそれは、必ずしも、結果が伴うとは
限らないから、

そうなると、いずれあきらめてしまう。

それでもあきらめきれないと
人から、力づくで奪おうとする。

その力もないときは、

泣いてすがる、人もいる。

こうして、あきらめと、精進とを行き来しながら、
人はそれでも、顔だけは一著前に大人になって、
ひげが生えたり、しわが寄ったりしているけれど

その中身は、
だだをこねたくなる、赤子の心を
必至にあやしているだけに、過ぎなかったりするのだ。

只、赤ちゃんに、ひげや、しわは似合わないだろうという
常識的な虚栄心にさいなまれて、
だだをこねる勇気もなく、

思わず唇をとんがらせたくもなるけれど、
それだって、ひげには似合わないから
しょうがなく、眉間にしわを寄せて

男は、男の振りをして、
今日も会社へ通っている。

時々は、はいはいもしたくなるけれど
それでは踏みつぶされてしまうから懸命に二本の脚で立って、
ふらふらになりながらも、それでも前に進むのだ。

こんな男を
男らしくないという
女がいたとしたら

かわいそうに、と言ってあげたい。

彼女の男は、必死になって
幼い頃、父母に教えられた
男という架空の人物を
熱心にまねしようとしているだけであるのに
彼女はそれを当たり前として、ほめてくれさえ、しないだろうから。

今日も、苦い酒に、顔をゆがめながら
男の瞳は幼い頃に見た
スーパーの付くヒーローの
たわいのない夢を見ている。

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